2月の読書メモ(技術)
『スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質』
- 作者: ジェイ・バーレサン,ペニー・ルクーター,小林力
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/11/24
- メディア: 単行本
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そんな,世界史と化学物質の相互作用を見事に描いている。ヴェネチアの繁栄を生み,大航海時代を開いた香辛料,壊血病を防いだアスコルビン酸,高性能な爆薬をもたらしたニトロ化合物,綿やシルクといった繊維,そして医薬品。どの章も興味深く,飽きさせない。
大航海時代を中心とした第一章,第二章からだいたい時系列で並んでいて,読みやすい。昔のことって今から見るとなかなか想像しにくくて,驚く話も多い。15〜18世紀の長期にわたる航海では,壊血病で船員が激減するのを想定し多めに載せて出港したとか。壊血病ゼロを初めて達成したのはクック船長。
奴隷制度に関連する化学物質。砂糖と綿の二つは分かりやすいが,最終章で挙げられている変異グロブリンは意外だった。サトウキビと棉の栽培に適したアメリカの熱帯地域では,アメリカ先住民よりマラリアに抵抗力をもつアフリカからの奴隷が重宝した。その抵抗力は鎌形赤血球症の遺伝子に起因する。
産業革命は繊維産業から起こったが,これは機械だけでなく化学との関連も深い。染料の研究は薬品産業の発展へとつながっていく。19世紀後半には,特にドイツが合成有機化学分野で隆盛を誇る。染料と染色法をめぐる激しい特許紛争がイギリスやフランスの染料業界を弱体化していた。
ドイツのバイエル社も初めはアニリン染料からスタート。アスピリンにもいち早く注目し商業化した。初期の抗菌剤,サルファ剤はガス壊疽の治療に使われた。一次大戦の頃は,傷から入った細菌がガス壊疽を起こすと,生存のために壊疽した四肢を切断するしかなかった。
そして最初の抗生物質ペニシリン。抗生物質の恩恵は今や誰もが受けている。乳幼児死亡率激減の立役者だろう。避妊薬,特に経口避妊薬も社会を変えた。またモルヒネ,ニコチン,カフェインなどの薬物も,戦争を起こしたり,クーデターの資金源となったり,世界に大きな影響を与えている。
「スパイス、爆薬、医薬品」の範疇に入らないが,塩やフロンも重要な化学物質。人類に不可欠な塩は古代から専売の対象とされてきた。冷凍サイクルを利用した冷凍船は食肉の輸送に威力を発揮していたが,20世紀には冷媒としてうってつけの物質フロン(なぜか本書の表記はフレオン)も合成される。
1930年,発見者のミジリーはフロンを吸い込んで吐く息で蝋燭を消すという,無毒性,不燃性を示すデモンストレーションを行なった。しかし70年代になるとオゾン層破壊の疑念が生じ,規制されていくことに。PCBも同様の運命に翻弄された。
初期の麻酔にはエーテルが用いられたが,可燃性で使いにくかった。これを解決するクロロホルム麻酔が登場し,南北戦争などで広く使われた。ビクトリア女王は第八子レオポルドを出産するにあたってクロロホルム麻酔を受けたそうだ。無痛分娩のはしりかな?最近読んだ彼女の評伝には載ってなかったエピソード。
『図解・テレビの仕組み』
図解・テレビの仕組み―白黒テレビから地上デジタル放送まで (ブルーバックス)
- 作者: 青木則夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/09/21
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テレビの技術とかってかなりブラックボックスのような感じがしてしまうけど,よく考えればちゃんと納得できる原理に基づいて作られているのがわかる。非常に巧妙にできているので,わかりにくいだけ。身近な技術の仕組みがだいたいでもわかれば,科学への不信感ってもっと払拭できる気がする。
『スマートグリッドがわかる』
- 作者: 本橋恵一
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2011/11/16
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電力・エネルギーをとりまく諸々とか,いろんなキーワードとか,各国の状況とか,情報がなんだか羅列してある感じで,あまり頭に入ってこなかった。
意外にもイタリアでスマートメーターが義務化され普及してるらしいが,これは電気料金の支払いの不正を防ぐためだとか(p.69)なるほどーw。
『理系なお姉さんは苦手ですか? −理系な女性10人の理系人生カタログ−』
理系なお姉さんは苦手ですか? ?理系な女性10人の理系人生カタログ?
- 作者: 内田 麻理香,高世えり子
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2011/08/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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NHKで「大科学実験」のディレクターをしてる等バリバリ働いてる方から,子育てと仕事を両立してる方まで,いろいろ。個人的には,もっとワークライフバランスについての質問・回答も読みたかったかな。
すごく軽い読み物。「理系は…」とか「文系は…」とか安易な二分法が目に付いたり,世間の臆測を強化してるようなとこもあって少し気になった。
小島寛之さんのブログでお薦めされていたので読んでみたのだが,ちょっと期待外れかも。題名から察するべきだったか。