1月の読書メモ(宗教)
『イスラム―癒しの知恵』
- 作者: 内藤正典
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/01/14
- メディア: 新書
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ではなぜ自爆テロ?という話だが,それは著者の『イスラムの怒り』に詳しい。信仰の敵とのジハードで命を落とす殉教は,イスラムでは価値ある行為とされているから。ただ911なんかを殉教で正当化するのはかなり無理で,現実にイスラム共同体の存続が脅かされている場合に限られるらしい。
悲しいことにパレスチナ,特にガザの状況は絶望的。自爆テロを殉教とみなしてしまうくらいに悲惨。だからこそハマスが支持を得た。しかし,本来イスラムの教えはかなりポジティブで,多用される「インシャアッラー」もその表れ。日本人は重い病気などすると「因果」とか「霊」とか後ろめたさを感じるが,その点,神の御業と達観しているムスリムは,くよくよすることも少ない。結果,予後もよいのではと著者は推測。少なくともQOLは上がるだろう。
それと,アッラーは人間の弱さを知悉していて,欲望に負けてラマダンなど戒律を破ってしまっても,後で喜捨などをして善行を積むことで,回復可能。ちなみにラマダン月の日中は,断食だけではなくて,性欲とかあらゆる欲望を絶つんだという(サウム)。日中だけ絶てばいいなんて食欲より簡単だ。
とまれ,イスラムの教えはムスリムの生活に深く入り込んでいて,敬虔の程度には差はあれど,基本的に望ましいものとして認識されている。
思いがけず叶った著者たちとトルコ外相の会見が詳しく紹介されている。EU加盟が後退したために実現した会見だが,外相の言うことは理にかなってる。「ヨーロッパの価値というのは、宗教、民族、言語にあるのではありません。…民主主義、人権、自由な市場経済システムにあるはずです。」p.103
ただ,著者がかなりイスラム贔屓で,西洋文明に批判的なのが少し気にかかった。宗教のおかげでよりよく生きているムスリムも多いだろうけど,余計な世話を焼かれる共同体重視の環境を煙たく思っている人もいるようだし,その程度がひどくて傷ついている人々もいるかもしれない。
それでも,西洋側からのイスラム理解が偏見に満ちていて,それが両者の関係をギクシャクさせていることは事実なのだろう。もっと相互理解が進むといいけれど,移民労働の問題もあり,経済面でもっと余裕が必要かも。宗教にこだわりのない日本人ができることも少なくない,のかもしれない。
『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』
- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/07/20
- メディア: 単行本
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著者の本は初めて読んだ。それにしても,この四文字で始まる書籍や番組って,いったいいくつあるのだろうか?