1月の読書メモ(小説)

『パリの蜂起』

小説フランス革命 2 パリの蜂起 (集英社文庫)

小説フランス革命 2 パリの蜂起 (集英社文庫)

 いよいよ1789年の7月が始まる。球戯場の誓いから,ミラボー「銃剣の力によるのでないかぎり、ここから動くことはない」,デムーラン「武器をとれ」による民衆と軍隊の衝突まで。
 小説だけあって,主要登場人物が限られており,流れを追いやすい。一巻から引き続き主役級のミラボーロベスピエールに,デムーランが加わる恰好。創作がかなり入ってて,活躍しすぎといえばしすぎだが…。昔,中公文庫『世界の歴史』で大革命読んだときは,人が多すぎいまいち消化できなかったなぁ。対照的。
 デムーランがけしかけられる場面は,ええっ?という感じ。三国志で,諸葛亮周瑜をけしかけて赤壁をやった伝説となんだかかぶった。…ていうかミラボーロベスピエールはいつヴェルサイユから戻ったんだろ?自分でやらずになぜわざわざやらせたんだ??
「武器をとれ」演説のあとの軍隊との衝突で,デムーランが指揮をとっているふうなのは史実に基づくんだろうか?
 …いやいけないいけない。小説なんだから,それはそれとして楽しまないとな。だけど無闇に気になる。最近伝記をよく読むせいだろうか。ともあれ次の巻はいよいよバスティーユ

バスティーユの陥落』

小説フランス革命 3 バスティーユの陥落 (集英社文庫)

小説フランス革命 3 バスティーユの陥落 (集英社文庫)

 いよいよ最初の佳境。バスティーユ襲撃の前日から,ベルサイユ行進まで。ダントンとマラが登場。民衆側はかなり烏合の衆な気もするが,大きな力で歴史を動かした。
 武器が足りず,7/14に廃兵院から銃・弾薬などを入手,バスティーユを包囲する。パリには王の軍隊が入っており,さらなる武器を求めていた。交渉がうまくいかず,跳ね橋が降りたことで民衆が殺到,多くの犠牲を出しながらも,要塞側を降伏させる。報復の槍首など,行き過ぎがあるのは仕方ないか…。
 歴史小説を読んでていつも気になってしまうのは,事実はどうだったのかということ。デムーラン,ダントン,マラなど革命の有名人がバスティーユで戦っているのは,史実がそうなんだろうか,それともまったくの創作で,真相は歴史の中に埋没してしまって永久に分からないのか。
 ともかくバスティーユが陥ち,革命を今後どうするかで悩ましい。アメリカ革命とは違って,民衆の利害は多様。事件の収拾を図り,将来につなげていくために,ベルサイユの議会が動く。ここらから,ミラボーロベスピエールの意見の相違が描かれはじめる。良い伏線だ。
 ロベスピエールは議会における議論を,正しい意見に軍配を上げる勝負のような感じで受け取っているのに対して,ミラボーは異なる意見のやりとりを通し,元の意見をさらに練り上げるという解釈。王の拒否権などを巡って,両者の対立が深まっていく。
 巻末あたりのベルサイユ行進,これはちょっとわざとらしいかなというのがあった。デムーランの恋人リュシルが行進の先頭に立って…という設定。あんまりあからさまだとちょっと萎えてしまう。
…万一史実だったら謝りますが。