12月の読書メモ(歴史)
- 作者: 後藤致人
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/03
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帝国憲法下では,天皇には大権があり,それぞれについて臣下から「上奏」が正式な制度として行なわれた。官僚の人事関係,召集などの議会関係,外交関係,陸海統帥部関係など。その上奏の前段階の非公式な報告・説明が「内奏」とされて,本書の中心となる。
内奏は多分に慣習として続いてきたもので,呼び方も「奏上」「伝奏」など一定しない。日記を書いた人によってもそれぞれ。このあたりをかなり綿密に解き明かそうとしているが,それはあまり意味があることのようには思えなかった。戦後,日本国憲法になると,「上奏」は廃止。
しかし,内奏は残った。芦田内閣が,内奏も廃そうとしたようだが,昭和天皇の意向により,慣習として続いていくことになった。佐藤首相に見られるように,内奏と御下問の繰り返しで「君臣情義」が形成され深まっていく例もあった。戦前は統帥部の「御下問対策」に見られるように,天皇の個人的見解が国政に間接的に反映されることが当然あったのだが,現憲法下でも,その傾向はある程度残ったのかもしれない。
戦後は何度か「内奏漏洩」が不祥事として起こる。防衛庁長官が天皇の言葉を公にしてしまい,「自衛隊のために天皇を利用した」と批判され更迭された事件など。
今上天皇への内奏も続いている。ただ,昭和と異なり,首相や閣僚の天皇に対する思い入れも薄くなって,天皇と政治の距離感は遠くなってきているようだ。
昭和天皇が戦後も長く在位したことが,今の内奏のあり方に及ぼした影響は大きい。やはり歴史はつながっているのだな。
ちなみに内奏・御下問に対する政府の公式見解は,「象徴としての天皇陛下に国情を知っていただき、理解を深めていただくということのために御参考までに申し上げる」ということらしい。(宮内庁次長 昭和63年5月26日 参院決算委員会)
- 作者: 譚〓美
- 出版社/メーカー: 新潮社
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本書は,13人のなかでも日本留学経験のある4人を中心に,また13人には入らないが同じく日本に留学した陳独秀,李大訢の人生にも触れつつ,日本と初期の中国共産党のかかわりを描いている。西郷隆盛はずいぶん彼らに影響を与えたらしい。
前提知識が乏しく,きちんと読みこなせなかったのは残念。