12月の読書メモ(法律)
- 作者: 内田貴
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/10/05
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市場経済を導入するのに契約法は不可欠。国民国家が誕生し,一国内で一つの制度が構築されてきたが,国際貿易が活発になってくると,国際的調和も無視できない課題になってくる。国ごとにばらばらの制度では,円滑な取引に支障をきたす。そこで,国際取引に関するウィーン売買条約というのがあるらしい。日本は加盟が遅れたために,条約に基づく先例の形成に参画できなかった。これはかなりのディスアドバンテージらしい。TPP加盟問題でも同じような議論があったなあ。
日本の契約法は結構特殊らしい。民法の条文数は1000を超えていて,えらい多いなとおもっていたが,ドイツやフランスに比べると半分以下。明治期には民法の基礎になる社会的慣習を抽出するのに無理があって,とりあえず大枠を法定したというところ。あとを解釈で補おうとした。
戦前に,鳩山元首相の大叔父さんとか,その弟子の我妻さんが,民法の精緻な解釈体系を構築して,それでずっと実務が成り立ってきた。僕も一時期司法試験を受けたことがあるのだが,条文よりも学説や判例が物を言う感じを強く受けた。法曹には慣れてしまって当然視してる人も多いようだが,これはかなり日本に特有の運用。今回の大改正ではその解消も狙う。確立した解釈や判例を,成文法に盛り込むというわけ。
それと,現在の取引慣行にマッチした規定も取り入れていくみたい。消滅時効や法定利率の見直し,約款,サービス契約,事情変更の原則など。興味深かったのが約款。ネット取引など,消費者が契約条件をしっかり読むことが考えにくいタイプの取引に,ある程度介入してくことが考えられている。大量の相手との画一的取引では,約款に示された条項をいちいち変更するのは経済合理性がない。でも介入なしでは不利な約款を飲まされることに。
改正まであと2,3年はかかるというが,良い法律を作ってもらいたい。学者と実務家ではかなりの温度差がある様子。やはり慣れ親しんだ条文がリセットされるのは辛いかもだよな。解釈・判例でうまくいってるから必要性が薄いというのもあるみたいだけど,それを言ったら何も変わらない。
- 作者: 大村敦志
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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改正については,その内容というより手続的な「どうやって民法改正を行なうか」という話が妙に詳しくて,誰を対象に書いた本なのか不思議だった。法律の知識が特にない人がこの本だけ読んでも,いったいどういう改正がなされようとしてるのか把握できないんじゃなかろうか。
「民法改正はどこへ」と題する第四章では,民法の役割を「財産の交換」から「人間性の開花=実現」に求める(p.176),とか,結章「民法典を持つということ」では,「来たるべき平成民法(二一世紀型の民法)においては目指されるのは、解体・分断されつつある戦後体制を言葉の真の意味での『共和国』…へと転換することであろう」(p.184)とか,なんだかふわふわした夢みたいのが強調されていて違和感あり。