11月の読書メモ(科学・技術)
- 作者: 安岡孝一,安岡素子
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2008/03/01
- メディア: 単行本
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「現在のPCのキー配列は,タイプライター時代,印字を行なうアームが互いに絡まらないように,タイピング速度を落とすためにつくられた配列がそのまま残ったもの」というのが本書で棄却される都市伝説だ。意外性,分かりやすさといった都市伝説の特徴を見事に備えている。
タイプライターが発明されたのは,1868年のアメリカ。日本ではこの年に戊辰戦争が始まっている。当初のキーは,ピアノの黒鍵白鍵のような二段配置で,アルファベット順に並んでいた。それが,キーの数を増やす必要性から三段になり,数々の試行錯誤と変遷を経ていく。メーカーによって異なる配置も使われたが,大文字小文字を一つのキーで共用する工夫を取り入れたこともあって,レミントンのQWERTY配置が有利に。タイピングコンテストでQWERTY配列が強かったという記事はあっても,速く打てないキー配置を目指したことなど,まったく出てこない。タイプライター会社の経営統合による市場独占も手伝って,19世紀末には完全にQWERTY配列が固定化する。
それではなぜあの都市伝説が作られたのだろう。それは,1920年代からささやかれた,QWERTY配列の根拠を活字棒の衝突回避に求める怪情報だった。これを「より効率的なキー配列」を発明したドボラック氏が援用する。彼は根強く自分のキー配列の宣伝に努めるが,1955年の連邦政府による実験によっても,ドボラック配列のメリットは確認できなかった。連邦政府は打鍵効率化によるタイプライターの台数削減を断念。
そして1985年に出版された経済史学者デービッドの「QWERTY経済学」説によって,QWERTY配列は非効率を目指していたというさらなる尾鰭がつく。彼は市場放任主義を批判する立場から,「市場の失敗」の代表例として「効率の悪いQWERTY配列」が「自由市場を独占した」ことをとりあげた。これが安易に引用され拡散されていくことになる。多くの人がPCを使いこなすようになってきて,これが大いに広まった。根拠がないにもかかわらず。
結構そういう話って,ほかにも多いのかもしれないな…。
すべて分析化学者がお見通しです! ?薬物から環境まで微量でも検出するスゴ腕の化学者 (知りたい!サイエンス)
- 作者: 津村ゆかり,立木秀尚,高山透,堀野善司
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2011/02/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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当たり前だけど,むかし学校の実験でやったのよりもずっと精密でデリケートな分析が行なわれてる。電子天秤の分解能は数十万〜数百万で,60kgの人だと御飯粒一個の増減が測定できるくらい。これほどの精度だと,場所による重力加速度の違いや気流・温度の影響が無視できない。
だから測定機器の校正というのがとても重要になる。液体の体積を測るマイクロピペットの校正は,吸い上げた水の重量を測って行なうが,その操作中に蒸発する量なども考慮しないといけない。分析化学者には熟練が必要なわけだ…。
意外な分析方法もあった。貝毒の量を測るのに,マウスに注射する方法が使われている。体重20gのマウス一匹を15分で死亡させる量が1マウスユニットだそう(p.54)。また鋼材の組成を知るのに,グラインダーで削って火花の形を見る火花検査というのがある。まさに職人技。
- 作者: 坂口菊恵
- 出版社/メーカー: 東京書籍
- 発売日: 2009/04/17
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書名に反して,見知らぬ他者からの性的アプローチ=ナンパに特に限った話ではなく,男女の性行動一般を学問的に説明する感じ。どこかで読んだような知識がいろいろと散りばめられている印象。Nスペでも以前男女の役割分担の進化についてやってたな。ハネムーン効果やクーリッジ効果が興味深い。