2月の読書メモ(その他)
・人物
- 作者: 福田千鶴
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/11
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家光の誕生日は,江の存命中極秘事項とされていて,前の出産から数えて産み月が足りなかった疑いが濃厚なんだって。実娘の初は,姉と同じ名前だが,これは出生直後に子のない姉夫婦に養子に出したそう。母娘で同じ名前とは何とも紛らわしい…。
江の3回の結婚のうち,最初の佐治一成との結婚は,婚約のみで後に破棄され,実際に輿入れはしていない。佐治一成の母は信長の妹の犬だが,犬が夫の死により佐治家を離れ,乳飲み子だった江がその後釜にされたらしい。あと面白かったのが江の名前の由来。昔の人の名前はいろいろ変わって一定しないが,はじめ「督(ごう)」とされていて,のち同じ読みで「江」とされる。「お江与の方」とすることもあるが,これは「おえよのかた」でなく「おえどのかた」で,住まいの江戸で呼んだのだという。それで江という漢字が使われるらしい。
- 作者: 加藤文元
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/12/01
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広く流布した説とは異なり,コーシーだけはガロアの理論を理解してくれていたという話には救われる。ただ,彼は七月革命を前に亡命し,次に論文を受け取ったフーリエは急死して論文は散逸。エコール・ポリテクニークにも落ちる。父親が陰湿な中傷で鬱になって自殺。時はナポレオン失脚後の復古王政期。ガロアは共和主義に期待を寄せていた。1830年のパリ七月革命では,在学中のエコール・ノルマル校長の日和見主義で,学生は外出禁止。革命に参加できなかったガロアは憤慨し,校長を批判して退学処分に。その後は運動にのめりこみ,王の暗殺まで仄めかし逮捕。そんな運動のさなかもガロアは自分の数学をあたため,幻の著作の構想もまとめていた。
決闘の前の晩に友人シュバリエに宛てた手紙は有名で,彼の理論の骨子とともに「僕には時間がない」との走り書き。脚色してるみたいにドラマチックだが,これが事実なんだよなあ。手紙も残ってる。いやはやすごい人物だ。しかも,ガロアは五次方程式の解の理論のアイデアを,方程式だけでなくさらなる数学的構造に適用することまで示唆しており,群や体の理論の先駆けとなった。集合論の道具立てもない時代に,これだけのことをしたのはすごいし,同時代に理解されなかったのも仕方ないのかもしれない。ガロアの仕事が発掘され注目されたのは,1846年というから,死後14年が経っている。これだけの時間が経って,ようやくガロアの理論が理解されるようになった。天才はほんとにつらい。
ガロアについては,物理学者のインフェルトによる『神々の愛でし人』という有名な伝記がある(もはや古典!)。機会があったら読みたい。インフェルトには,アインシュタインとの共著『物理学はいかに創られたか』があって,岩波新書で昔読んだなあ。これも良い本。あと,小島寛之さんの『天才ガロアの発想力』は,ガロア理論が分かりやすく書かれていてとても勉強になりました。
- 作者: 藤本健二
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
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・教育/学問
- 作者: 鳥飼 玖美子
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別に通訳者としてのポジショントークというわけでもないだろう。日本人は日本語で考えて,英語は外国語として使えれば十分と思う。(将来的に)皆が同時通訳者レベルになったり,(遠い将来的に)日本語を捨てて英語を母語としたりする必要はないんじゃなかろうか。著者の鳥飼玖美子氏は,ETVの『知るを楽しむ 歴史は眠らない』に出演。http://www.nhk.or.jp/etv22/tue/
英語公用語論批判に関しては,以前,薬師院仁志の『英語を学べばバカになる』を読んで感想を書いたけど→ http://bit.ly/hDzUWa 英語を社内公用語にする日本企業ってほんとにどんどん増えるんだろうか?
- 作者: 森口朗
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/12/17
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昔通っていた小学校に,ギターで「戦争を知らない子供たち」を弾き語る先生がいた。他にも学校って色々と不思議な違和感あったけど,戦後教育とはこんなものだったのかーというのは大人になってから本を読んで知った。成人してから膝ポンすることって他にもいろいろある。成長するって過去を体系づけていくこと。脳の記憶容量は人生でそんな変わんない。情報は,大人になるほど効率よく圧縮されてしまってある。
- 作者: 福田ますみ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/01/17
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この本『でっちあげ』こそでっちあげだ,と主張するサイトもある。似たようなのがいくつもあるようだが,どれもあまり説得力がないと感じた。この事件については,この記事が要領よくまとまってると思う→ http://bit.ly/hhQc4t
- 作者: 林幸秀
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/10
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ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院 (光文社新書)
- 作者: 水月昭道
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/09/17
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・その他
- 作者: P.W.シンガー,Peter Warren Singer,山崎淳
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2004/12/22
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シンガーは『ロボット兵の戦争』,『子ども兵の戦争』に続いて三冊目。民間軍事会社には,戦闘もする軍事役務提供会社,戦略練ったり訓練したりの軍事コンサル会社,後方支援・兵站の軍事支援会社があって,それぞれの業界でしのぎを削ってる。これらの会社に依存してる国もある。民間軍事会社にはまだまだ不透明なことが多くて問題らしい。契約金額をふっかけるとか,手を抜いて紛争を引き延ばす,とか。紛争で食ってるのだからしょうがない?あと,戦闘員の脱走が戦略的に大損失でも,敵前逃亡は重罰とかいった軍法の適用はない。このへん中世の傭兵に似てるなあ。
- 作者: 新井紀子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
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コンピュータの得意分野は記憶,計算,パターン認識。でも論理の世界と意味の世界を繋ぐのは人間の仕事。写真に何が写ってる?などは二次元データを領域に分けてそれぞれ意味を付与する必要があり,コンピュータには難しい。しかしこのような知的単純作業だけが人間に残るとしたら,人はコンピュータの下働きになり下がってしまう。学生時代におはぎをパック詰めする深夜バイトをしたことがある。おはぎを作るのは機械で,詰めるのは人間。機械より単純作業をしている自分って…と思ったが,知的労働でもそんな事態が起きるかもしれない。未来はなかなか予測しがたい。
- 作者: 矢部孝,山路達也
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2009/12/16
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