日の出の時刻

 そういえば,もう初日の出を何年も見ていない。冬のこの時季,日の出の時刻は一年のうちでもかなり遅いので,日の出前に起きるのは難しくないのだが。国立天文台のサイトによると,今日,明日あたりに,日の出の時刻は最も遅くなる。例えば,千葉の日の出時刻は,6日から9日にかけて,6:49,6:50,6:50,6:49と変化する。


・なぜ冬至より日の出が遅いのか
 一年で昼の長さが一番短いのは冬至であるが,一年で日の出が一番遅いのは1月上旬で,少しずれがある。この理由は,太陽の南中時刻の変化にある。12月から1月にかけては,太陽の南中時刻が毎日少しづつ遅くなっていくからなのである。太陽の南中時刻は経度だけでなく,季節によっても変化する。子どもの頃,理科の観察で,太陽の南中時刻をはかった覚えがあるが,先生もそこまでは教えてくれなかった。
 日の出,日の入りは,太陽の上端が地平線と一致する瞬間で,太陽の南中は太陽の中心が子午線を横切る瞬間をいう。なので,一日のうちで日の出から南中までの時間と,南中から日の入りまでの時間は等しい*1。だから,仮に昼の長さが変わらなければ,太陽の南中時刻が日々遅れるにつれ,日の出も日の入りも毎日少しづつ遅くなる。これが効いてくるのだ。実際には,昼の長さは一年を通して変化していて,冬至を過ぎると毎日少しづつ昼が長くなる。仮に太陽の南中時刻が変わらなければ,日の出は日々早くなる。冬至から半月あまりの間は,南中時刻の遅れによる日の出の遅れ効果が,昼が長くなることによる日の出の進み効果を上回っているので,日の出が遅くなっていく。両効果は現在ちょうど釣り合ってほぼ打ち消し合っているが,次第に進み効果が遅れ効果を逆転し,日の出は日々早くなってくる。


・南中時刻の変化の原因
 太陽の南中時刻が季節によって変化するのは,地球の公転の角速度が不均一であることと,地軸が傾いていることによる
 地球は太陽のまわりを公転しているが,その軌道は真円でなく楕円である*2。冬は地球が太陽に比較的近いので,公転角速度が大きい。夏はその逆で,公転速度が小さい。ケプラー面積速度一定の法則である。この影響で,天球上を動く太陽のスピードは冬に速く,夏に遅くなる。春秋はその中間である。
 また,地軸が傾いているため,天球上の太陽の軌道(黄道)は天の赤道に対して23.4°傾いている。だから黄道上の位置によって,太陽が天球上を動く速さの,東西方向(赤道方向)成分の割合が変わる。仮に黄道上を太陽が一定の角速度で動くとすると,太陽が天の赤道から離れるほど,太陽の動きは東西方向に速くなる。だから冬や夏には,太陽の角速度の東西方向成分(赤経の変化率)が速くなり,春秋には遅くなる。
 12月から1月にかけては,これら二つの効果が合わさって,太陽が天球上を西から東へ動く速さが一年で最も速くなっている。地球の自転によって天球は東から西へ一日一回転しているから,太陽は他の恒星よりも少し遅いスピードで動いているが,12月から1月にかけて太陽のスピードは最も遅くなる。それで南中から次の南中まで普段より時間が余計にかかるので,南中時刻が日々遅れているというわけだ。

・参考サイト
 AstroArts天文の基礎知識 1.時刻と時刻系

*1:わずかな誤差はある

*2:太陽がその焦点に位置する