3月の読書メモ(その他)
『検証 大震災の予言・陰謀論 “震災文化人たち”の情報は正しいか』
検証 大震災の予言・陰謀論 “震災文化人たち”の情報は正しいか
- 作者: ASIOS,アンドリュー・ウォールナー
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2011/11/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ECRRの関係者を中心に,海外のデマ製造人についても検証してる。意外だったのが,ミチオ・カク氏。彼は物理学者で,彼の書いたアインシュタインの伝記(訳は菊池誠氏)は良かったのに…。「カクは震災後、数えきれないくらいテレビに出演していて…危険性を強調しまくってきた」p.152
危険を煽る人々だけでなく,苫米地英人氏など無闇に安全と言い張る人も検証の対象になってる。全然知らなかったのは,松原照子氏はじめ,震災を予言していたとして話題になってた人々。下手な鉄砲も数うちゃ当たる方式か,曖昧な予言か,予言の捏造で「的中」と称し信者を獲得しているらしい。うーむ。
震災直後に多くの人が真に受けてしまった怪文書「原発がどんなものか知ってほしい」についての検証もためになった。まだ素朴に信じている人もいるんじゃないかなぁ。
『戦争の経済学』
- 作者: ポール・ポースト,山形浩生
- 出版社/メーカー: バジリコ
- 発売日: 2007/10/30
- メディア: ハードカバー
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民間軍事会社(PMC)の分析が面白かった。いろいろ問題もあるがコスパが良く成果を上げているのには経済学的な理由がある。自由競争で決まる均衡賃金よりも高く設定された効率賃金を採用することが可能で,優秀な人材を登用できる。そんな芸当ができるのは,PMCは既に国家から十分な訓練を受けた人材を採用して研修費用を節約できるし,契約期間が終われば,年金を支払って一生面倒を見るなんてことをしなくていいから。そう考えると,冷戦が終わって以降に軍事の民営化が進んだのは,ごくごく自然な経済現象だったのかなあ。
冷戦後は世界各地の内戦と国際テロが主要な戦争の舞台になった。内戦などの紛争リスクは,国の経済が天然資源に依存している場合に極大化する。反乱軍の資金源になるし,産出地域の分離独立が儲かりやすいし,資源の生み出す富が格差をもたらすし,民主主義を構築するインセンティブを殺ぐから。
小規模な紛争を促進する武器として悪名高いのがカラシニコフAK-47。軽量,操作が簡単で殺傷力が高く,信頼性も高く,価格も安くて大量に出回る。大規模な兵器とは異なり競争市場が成り立っているため,AK-47の相場を見れば紛争がどれだけ差し迫っているかが分かるという。
戦争なんて,物騒な話ではあるけれど,ちゃんと経済の論理に従って物事は動いているものだな。ただ完全に利益や利権で動いているわけでもなく,政治的な動機も重要なファクター。かなり特殊な分野とは言えるんだろう。